◆ 断じてム○キングのパロディではない
『おさわり探偵 小沢里奈』シリーズなど、
積極的にオリジナルタイトルをリリースし続けるサクセスが、
2007年8月にリリースしたシミュレーションRPG。
某『ム○キ○グ』を髣髴とさせるパッケージ・題名だが、当然、関連は無い。
ジャンルもシミュレーションRPGなので、思いっきり別物だ。
しかし、それを意識したのは言うまでもなく。
◆ 概要
ゲームは、クォータービュー視点(右斜め視点)で展開する、
ターン制のシミュレーションRPG。
『ムシボーグ』と呼ばれる虫型ロボットのユニットを動かし、
敵の全滅や目的地到達など、
様々なミッションが用意されたマップを攻略していくというものだ。
シミュレーションRPGとしては、結構オーソドックスな作りである。
ただ、味方の攻撃時だろうと敵の攻撃時だろうと、常に『格闘・射撃・砲撃』、
『反撃・防御・回避』の三種のコマンドを選んで展開する戦闘システム、
『コマンドカード』と呼ばれる、特殊カードによる逆転要素など、
独自のシステムを複数搭載。
虫型ロボットがユニットなだけに、武器装備のカスタマイズ、
自軍のエンブレム(紋章)のデザインができるエディットなど、
「お約束」の要素もきちんと収録されている。
また難易度選択システム、自由にユニット強化が行えるフリーマップ
『古代の樹海』等、救済処置も豊富。
ユニットロスト無し、未出撃ユニットにも経験値が配分されるなど、
シミュレーションRPG初心者への対策も充実しており、敷居は低い。
かと言って、上級者に対する配慮も怠ってなく、高難易度モード、
フリーマップ制覇からカード集めなど、やり込みも充実しており、
至れり尽くせりな内容に仕上げられている。
◆ 職人技の光るゲームバランス
今作は、何と言っても職人技の光るゲームバランスに全てが集約される。
主にユニット周りだが、それぞれの長所と短所が尊重されており、
全てが「完全無欠の万能ユニット」とならない、絶妙な調整が図られている。
その為、昨今のSRPGでありがちな、力任せで一方的な展開にもなり難く、
理詰めで戦う、駒遊びの面白さが見事に表現されている。
また、ユニットは武器パーツ等のカスタマイズで、
プレイヤー好みのアレンジを付け加えることも可能。
格闘攻撃に特化したタイプ、ビーム攻撃を跳ね返す防御タイプなど、
パーツの組み合わせ次第で、様々な特徴を持ったユニットが創造できるので、
戦略の幅も広い。
更に各パーツもユニットと同様に、「完全無欠の最強武器」は一切無く、
どれを装備しようとも、ユニットとパーツの個性が尊重されるよう、
絶妙なバランス調整が成されている徹底振りだ。
まさに巧みの技とは、この事。
ユニットのみならず、他のマップデザインでも巧みの技は炸裂。
敵ユニットと地形の配置、能力バランス、そのどれもが的確で、
戦略を考える面白さが美しく表現されている。
マップ自体も使い回しが少なく、同じ戦略が通用する場面も少ないなど、
常に新鮮な手応えを味わえる工夫が成されていて、手応えがある。
中には極端なマップ(全てが毒沼など)もあったりと、
単に見るだけで楽しませてくれるものがあるのも、面白いところだ。
戦闘でも、常に三種のコマンドを状況に応じ、的確に選ばねばならない、
システムの存在意義を押し出した調整となっていて唸らされる。
「適当にボタンを押してけば良いや」、
なんて軽い気持ちでコマンドを選んで行くと、
本当、一瞬で戦況が不利になる徹底振り。
まさに「考えない者に勝利は無い」、とでも言ってるかのようなこの調整には、
シミュレーションRPG好きなら感動は必至。
如何に今作が本気のシミュレーションRPGなのか、とくと思い知らされるだろう。
◆ テンポも抜群。戦闘シーンカット機能が無いのに煩わしさゼロ
バランスのみならず、ゲームテンポもすこぶる良い。
戦闘シーンはシステムの都合もあり、設定等でカットできないのだが、
驚くほどスピーディに展開するので、煩わしさはほとんど無いし、
各マップのクリアにかかる平均時間は約15~20分以内(流石に終盤になると、
それ以上かかるマップも出てくる)と、適切な量でまとめられており、
モチベーションが落ち難い。
また、処理落ちがほとんど生じないのも凄いところ。
特に戦闘シーンは全編、3DCGで描かれており、
DSというハードを考えれば、あからさまな無茶をしてるのだが、
これが全くもたつくかず、動く、動く。
3DCGの水準は、そんなスクウェア・エニックス製のDSゲームほど高くないもの、
そのスピード感ある動きには、誰もが圧倒されてしまうかもしれない。
更に、セーブ・ロードの時間もかなりの速さ。
特にDS本体を立ち上げ、起動に至るまで時間は、数あるDSゲームの中でも、
上位に食い込む速さで、最初の立ち上げからビックリさせてくれる。
セーブも、決定してほんの数秒で完了するほど速く、
情報量の多いゲームという背景を何ら感じさせないのが凄い。
このスピードを一回でも体感してしまうと、
他のDSのゲームが遅く感じるようになってしまうのは避けられない。
◆ 初心者からやり込み派まで幅広く対応
初心者から上級者まで、幅広く対応した作りも見逃せない。
ユニットロストが無く、戦力不足に陥る事は皆無なので、
初心者も安心してマップを進めていけるし、
自由にユニットが強化できるフリーマップ等の救済処置もあって良心的。
上級者も、フリーマップを使わなければ、歯応えのあるゲーム展開が堪能
できるほか、高難易度モードなど、物足りなさを感じたプレイヤーの為の
処置も充実しているので、高い満足感を得られる。
充実したやり込み要素も特筆モノ。
フリーマップの完全制覇や『コマンドカード』のコンプリート、紋章探しと、
その物量はやり込み派のプレイヤーをも唸らせるほどだ。
特にフリーマップは、全部で60以上とボリューム満点。
マップも簡単なものから、詰め将棋な鬼難易度のものまで、
バリエーションに富んでいて、硬派なプレイヤーも納得間違いなし。
こんな子供っぽいゲームで、ここまで遊べるだなんて!
数あるシミュレーションRPGを遊び尽くしてきた方も、
この充実振りと手応えの深さには、腰が抜ける思いをする…かもしれない。
◆ 侮れないシナリオと、正義の人「ヒュードルさん」
何気にシナリオも良い出来である。
異世界に飛ばされた少年少女達が、悪のムシボーグ軍団と戦っていく、
王道一直線の内容なのだが、キャラクター作りが上手くできており、
彼らのやり取りを見ているだけでも楽しい。
注目は、ゴキブリ(!)のムシボーグを操る正義の人、ヒュードル。
怪し過ぎる容姿、紳士的ながらも何処か抜けた立ち振る舞い、そして
熱過ぎる正義の魂には、見る者全てがくぎ付けになってしまうこと、
間違いなし。
彼を楽しむ為に今作を買っても、後悔は一切しないと断言しておこう。
またそれ以外にも、ストーリーでは妙な小ネタも炸裂。
「いしのなかにいる」など、子供には到底、理解できないそれらには、
「誰がターゲットのゲーム?」と変な疑問が湧いてしまうだろう。
この辺のノリは、公式サイトの4コマを見ると、よく分かるんで、
気になる方は是非、チェックして頂きたい。
◆ タッチペン操作にしか対応してないカードミニゲームが残念
残念なのは、特殊カード『コマンドカード』による一発逆転要素。
本編で様々なカードが登場し、これを使う事で攻撃力を高めたり、
ユニットの体力を回復したり、様々な事が行える。
しかし、この攻撃力を高めるカードに問題あり。
その種のカードを使うと、ミニゲームが始まるようになってるのだが、
これがタッチペン以外の操作を受け付けない。
しかも、ミニゲームの大半はワザワザ、ペン専用にするまでも無い、
連打ゲームにハエタタキゲームなど、単調で疲れるものばかり。
ゲームテンポを阻害する要素として機能してしまっている。
特に敵がカードを使った時が辛い。
自分が意図しない形で、ミニゲームをやらされる事になるので、
無駄に疲れる。
もはや、それはシミュレーションRPGでなく、アクションゲームである。
また、敵とカードの使用がぶつかった時だけの『プチプチ潰し』の
ミニゲームも難易度調整が極端で、負け易いのが腹立たしい。
ゲーム自体もわざわざペンでやる必然性が出てなく、
無理矢理さが出てしまってる。
多分、ニンテンドーDSのゲームであるのをアピールする為、
こんなのを入れたのだと思うけど、流石に蛇足。
折角、シミュレーションパートが良い出来であるのに、これは勿体無い。
これを入れるぐらいだったら、省いて頂きたかったところだ。
或いは、入れるにしても、ボタン操作に対応させるとか。
特に、ボタン操作に対応していれば、このシステムもそこそこ可能性の
あるものとして、光っていたかもしれないだけに残念。
無理にDSを意識しないで頂きたかった。
また、このカードは敵ユニットのステータス画面で、所持しているものが
確認できない、敵への攻撃を決定して戦闘画面に移行すると、
キャンセルが効かなくなるのも地味に辛い。
特に前者は、確認できるだけでも、ゲームの戦略性に大きな変化があっただけに、
できればそういう仕様にして欲しかったところだ。
◆ シミュレーションRPGを愛する全ての人達に
『コマンドカード』の欠点はあれど、純粋にシミュレーションRPGとして、
高い完成度を誇るのは確か。
最近のシミュレーションRPGは、キャラクターやストーリーに凝るものが市場を
席巻するようになり、純粋にゲームとして遊べるものが少なくなりつつある。
それにゲームバランスでも、それらを重視するあまり、
「強いキャラを戦場のど真ん中に配置し、敵を一網打尽にする」、
俗に言う『無双化』が定番となってしまい、
従来の『マップごとに戦略を考える面白さ』が疎かにされている。
そんなのものが席巻する昨今、リリースされた今作は紛れも無く、
「正統派」と力説できるシミュレーションRPGであり、
シミュレーションRPGを愛すユーザーが心から待ち望んだ作品だと言える。
ユニットごとの特徴が尊重されたゲームバランス、練られたマップ構成、
戦略を考える面白さ、その全てが本物。
昨今のスタイルに欲求不満を覚えていた、ユーザーの気持ちをふっ飛ばす
破壊力、感動が今作には満ち溢れている。
シミュレーションRPG入門編としても、完璧な作りであり、その懐の広さは、
かつてゲームボーイとスーパーファミコンで発売されていた、
あの『リトルマスター』シリーズを髣髴とさせる。
ワゴンで投売りされてる(注:現在はやや高値安定してきた模様)ゲームなだけに、
警戒心を覚えてしまうのも仕方が無い。
見た目が子供っぽいから、大人には手を伸ばし難い雰囲気があるのも事実だ。
しかし、今作はそれを取っ払い、突撃してでも遊ぶ価値のある逸品である。
こんなにも遊び込めるシミュレーションRPG、最近じゃ滅多に無い。
それに、ここまで本格的な逸品、シミュレーションRPGを愛する人なら、
(大げさだけど)遊ばなくては大損も良いところだ。
ニンテンドーDSを持ってるユーザーなら是非、遊んでみて欲しい。
シミュレーションRPGを愛するプレイヤーなら、なおのこと。
値段以上の満足度を約束する。
定価でも決して後悔はしない。
--- おまけ:海外版PV ---
⇒海外版はアトラスからの発売となっている。
タイトルも、こちらの方が明らかに良い。






